Project Nyx(プロジェクト・ニクス)とは
宇野亞喜良の美術・衣装、金守珍の演出を基盤に、新宿梁山泊の水嶋カンナが06年に立ち上げ。不朽の名作から知られざる傑作まで、忘却の彼方に漂うイメージに息を吹き込み、現代のパフォーマンスとして蘇らせる実験演劇ユニット。 さまざまなジャンルのアーティストが出逢うことにより、演劇という枠を超え、音楽、舞踊、アートが融合した新たなエンターテインメントの創造を志す。 旗揚げより、妖しく華麗でアヴァンギャルドなヴィジュアルの、 “エンターテインメント美女劇”を掲げ、女性の美しさ、強さを表現し続けている。近年では“女歌舞伎”に挑戦し、性差を乗り越え、様々な既存意識を突破する、ボーダーレスな作風を生み出している。
水嶋カンナ
青年座研究所を卒業し、94年「青き美しきアジア」より新宿梁山泊に参加。唐十郎作品「ベンガルの虎」「ジャガーの眼」、「少女仮面」、「二都物語」、「二都物語」、「腰巻おぼろ」、「蛇姫様」、「少女都市からの呼び声」などで主演をつとめる。また、映画「夜を賭けて」(金守珍監督)の制作デスクを担当。その後、ダンスコラボレーション舞台「上海異人娼館」、「美女と野獣」の制作を担った際に、宇野亜喜良(当時の表記。現在表記は宇野亞喜良)氏と出会い、その世界観に魅せられ、06年にProject Nyxを立ち上げる。現在はProject Nyx主宰としてプロデュースを行うほか、新宿梁山泊にてテント女優としても活躍。
宇野亞喜良
1934年生まれ。名古屋市立工芸高校図案科卒業。カルピス食品工業広告課、日本デザインセンター、スタジオイルフィル、スタジオReを経てフリーになる。マックスファクターの広告、寺山修司の天井桟敷の宣伝美術、舞台美術を手がける。56年日宣美展で特選、60年日宣美展会員賞、92年赤い鳥挿絵賞ほか受賞。82年講談社出版文化賞挿絵賞、99年紫綬褒章、10年旭日小綬章を受章。主な出版物は『ル・シネマ』(マガジンハウス)、『宇野亜喜良の世界』(立風書房)、絵本『あのこ』(理論社)、『王さまのねこ』(文化出版局)、『あかるい箱』(マガジンハウス)など。舞台では、コクーン歌舞伎の宣伝画や、ダンス+音楽舞台「上海異人娼館」、「美女と野獣」の芸術監督、Tファクトリープロデュースの衣装・美粧、タカイズミプロジェクト、新宿梁山泊、Project Nyxの美術・衣装など、舞台美術でも注目を集めている。2015年、新宿梁山泊「ジャガーの眼」美術において第22回読売演劇大賞選考委員特別賞受賞。2019年シアターコクーンプロデュース「唐版 風の又三郎」(演出:金守珍)で、美術・衣装を手掛ける。
金守珍
蜷川スタジオを経て、唐十郎主宰「状況劇場」で役者として活躍。蜷川と唐という「アングラ・小劇場」の代表とも言うべき演出家から直接に指導を受ける。87年、日本の演劇界に失われつつある物語(ロマン)の復権を目指し、新宿梁山泊を創立。旗揚げより全公演の演出を手掛ける。劇場やテントなど、空間を存分に使うダイナミックな演出力が認められている。89年「千年の孤独」でテアトロ演劇賞受賞。93年「少女都市からの呼び声」で文化庁芸術祭賞受賞。98年「飛龍伝」で読売演劇大賞演出家賞受賞。01年、映画「夜を賭けて」にて初監督。第57回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人監督賞、02年、第43回日本映画監督協会新人賞を受賞。毎年6月に花園神社で唐十郎作品のテント興行を演出し注目を集める中、10年より、師匠と仰ぐ蜷川幸雄の舞台「血は立ったまま眠っている」「下谷万年町物語」「盲導犬」に出演。16年、蜷川幸雄追悼公演「ビニールの城」(森田剛、宮沢りえ主演)で、蜷川幸雄より演出を受け継ぎ、以降、シアターコクーンプロデュースの唐十郎作品演出を担う。19年「唐版 風の又三郎」(窪田正孝、柚希礼音主演)、21年「泥人魚」(宮沢りえ、磯村勇斗主演)、23年「少女都市からの呼び声」(安田章大、咲妃みゆ主演)の演出を手掛け好評を博す。23年、第57回紀伊國屋演劇賞個人賞受賞。「アングラ演劇」の理念と実践を伝え、次世代を担う演劇人の育成にも尽力している。
〈金守珍受賞作品〉
1998年 「飛龍伝」
第5回読売演劇大賞演出家賞受賞
2001年 日韓合作映画「夜を賭けて」
第57回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人監督賞
第43回日本映画監督協会新人賞を受賞
2017年 「時代はサーカスの象にのって」
韓国芸術評論家協議会 第37回最優秀アーティスト賞受賞
2023年 「下谷万年町物語」「青ひげ公の城」
第57回紀伊國屋演劇賞個人賞受賞
2006
第1回公演「かもめ或いは寺山修司の少女論」(シネマアートン下北沢)では、
映画のはねた映画館で、映像、朗読、人形、演劇の融合を試み、いままでにない不思議な舞台空間を生み出した。
2009
第4回公演「星の王子さま」(ザムザ阿佐ヶ谷)では、
初の美女劇として蘭妖子、渚ようこ、中山ラビ、フラワーメグなどを迎え動員を伸ばした。
2010
第5回公演「伯爵令嬢小鷹狩掬子の七つの大罪」(芝居砦・満天星)の美女劇第2弾では、
ラストシーンで舞台上に水を張る演出で話題を呼んだ。
第6回公演「星の王子さま」(再演・吉祥寺シアター)ではカルメン・マキが出演し、
時には母のない子のように」を熱唱。第65回文化庁芸術祭参加。
2011
第7回公演「伯爵令嬢小鷹狩掬子 の七つの大罪」(ザ・スズナリ)では、
寺島しのぶの主演が話題になり、観客動員を大幅に伸ばした。
2012
第8回公演「浅草版・くるみ割り人形」(吉祥寺シアター)では、毬谷友子を主演に迎え、
アンダーグラウンド版・宝塚として、女性だけによるスーパー・エンターテインメントを確立。
第10回公演「上海異人娼館」(シアターウエスト)では、吉田日出子が出演し、
名曲「ウエルカム上海」を熱唱。第67回文化庁芸術祭参加。
2014
第11回公演「宝島」(シアターウエスト)では、ピンク・レディーの未唯mieを迎え、
大人のメルヘン&冒険ファンタジーを創造。
2015
第13回公演「新宿版千一夜物語」(シアターウエスト)では、
カリスマバンド・シャカラビッツを迎えロックアンダーグラウンドを初展開。
「人魚姫」(シアターウエスト)では、読売演劇大賞受賞の藤田俊太郎を演出に迎え、
元宝塚の悠未ひろを迎え、アンダーグラウンド宝塚としてクオリティ高い音楽劇を創作し、兵庫公演を実現。
また、作:やなせたかし、絵:宇野亞喜良の絵本「霧野仙子」を朗読劇に仕立て、カフェ公演を敢行。
2017
第16回公演「時代はサーカスの象にのって」(新宿FACE)では、サヘルローズを主演に迎え、
プロレスリングを舞台に、シャカラビッツの演奏でライブ感覚のミュージカルを創作。
第17回公演、澁澤龍彦の幻想小説「犬狼都市」(芝居砦・満天星)を
舞踏、ピアノ生演奏、演劇をコラボレーションさせ舞台化。
2018
第18回公演「奴婢訓」(シアターウエスト)で、寺山修司の金字塔を美女劇に仕上げ、
ジェンダーの垣根を超えた作風と評された。
やなせたかしの絵本「霧野仙子」の朗読劇で9都市Caféツアーを敢行。
2019
第20回公演「売春捜査官」(芝居砦・満天星)で、つかこうへい作品に初挑戦。
2020
宇野亞喜良発案企画として、白石征作品に初挑戦。
第21回公演「新雪之丞変化」(ザ・スズナリ)で新たなジャンル“女歌舞伎”を生み出し好評を博した。
2021
つかこうへい作品第22回公演「ストリッパー物語」(芝居砦・満天星)を公演。
コロナ禍の厳しい状況の中、クラウドファンディングを行いながら公演を果たした。
2022
女歌舞伎第2弾第23回公演「さんせう太夫」(ザ・スズナリ)で、
アングラでも、新劇でもない新しいジャンルが生まれたと劇評された。
第24回公演「青ひげ公の城」(ザ・スズナリ)で渋谷駿の正統派マジックとコラボレーションし、
Project Nyx美女劇の集大成を創作。
本作の演出の評価で、金守珍が紀伊國屋演劇賞個人賞。
若手アングラ劇作家・矢内有紗の「酒乱お雪」(芝居砦・満天星)を新生公演として上演し、
現代に新しく生まれるアンダーグラウンド演劇の道を開いた。
2023
ラサール石井を迎え、つかこうへい2作品連続公演「飛龍伝」「ストリッパー物語」(ザ・スズナリ)を上演。